採用できたのに、すぐ辞めてしまうとき

条件は悪くないはずなのに、3か月で辞められてしまった。
そういうとき、給与や休みを他店と比べて考えがちです。けれど、同じ条件で長く続いている人もいます。辞めるかどうかは、条件の良し悪しだけでは決まっていないようです。
満足は、差で決まる
人がサービスや職場に満足するかどうかは、事前に思っていたことと、実際に経験したことの差で決まる、という考え方があります。期待不一致モデルと呼ばれます。
言い方を変えると、こうなります。
| 結果 | |
|---|---|
| 期待 < 実際 | 満足する |
| 期待 = 実際 | こんなものか、と思う |
| 期待 > 実際 | 不満になる |
大事なのは、実際が良くても、期待がそれ以上なら不満になるところです。
月8日休みは、悪い条件ではありません。けれど「10日は休めると思っていた」人にとっては、不満の材料になります。
求人票は、期待を上げる道具です
採用の場面で、期待をいちばん押し上げるのは求人票です。
よく書くほど応募は増えます。それ自体は正しい動きです。ただ、上げた期待は、入社後にそのまま返ってきます。
書き方で差が出やすいのは、このあたりだと思います。
| 書き方 | 学生・求職者が受け取るもの |
|---|---|
| アシスタント期間は平均2年 | 自分も2年でデビューできる |
| 教育体制が充実 | 誰かが毎週見てくれる |
| アットホームな職場 | 人間関係で困ることはない |
どれも嘘ではありません。けれど、受け取られ方のほうが具体的です。そこに実際が届かないと、差が生まれます。
期待を下げる、という話ではありません
ここを誤解すると、求人票が後ろ向きになってしまいます。
やることは2つのうちどちらかです。
- 実際のほうを上げる
- 期待を、正確にする
「平均2年」なら、早い人と遅い人の両方を書く。「教育体制」なら、誰が・いつ・何をするのかを書く。具体的に書くほど、期待は正確になります。そして具体的な求人票のほうが、応募も増えやすいように思います。
数字を足すと冷たく見えると心配されることがありますが、実際には逆のことが多いようです。はっきり書いてあるサロンのほうが、信用されます。
業務委託は、特にずれやすい
雇用と業務委託では、期待のつくられ方が違います。
業務委託は歩合が中心で、保障のある給与とは考え方が別です。ここを曖昧にしたまま「月収50万円可能」とだけ書くと、受け取る側は固定の給与として読みます。
- 歩合率
- 想定される売上と、そのときの手取り
- 社会保険や保障の扱い
- インボイスの取り扱い
このあたりを最初に数字で見せておくほうが、あとで揉めずに済みます。入ってから知ることが多いほど、差は大きくなります。
インボイスは、最近とくにずれやすいところです
業務委託で働く方が免税事業者のままだと、消費税の扱いでサロン側が負担することになる部分が出ます。
その分を報酬から差し引くのか、サロンが持つのか。半分ずつにするのか。ここを決めないまま始めると、最初の支払いで食い違います。
控除できる割合は年度ごとに段階的に変わっていきます。割合そのものを追いかけるより、誰がどこまで持つのかを先に決めて、書面に残しておくほうが揉めません。税率や割合の最新の扱いは、顧問の税理士にご確認ください。
もうひとつ。この決め方を一方的にしないほうがよいと思います。入る前に話して、お互いが納得した形にしておく。走り出してから変えるのは、ずっと難しくなります。
見学は、期待を合わせる場です
求人票の文字で合わせきるのは、限界があります。
見学で実際の店内を見て、働いている人に会うと、期待は現実の側に寄ります。だから見学に来た人の入社後は、続きやすい傾向があるように感じます。
そのとき、良いところだけを見せないほうが結果的に良いかもしれません。
- 忙しい時間帯を、あえて見てもらう
- アシスタントの1日を、そのまま見せる
- 休みの取り方を、スタッフから話してもらう
見学で落ちる人は、入社しても続かなかった可能性があります。早く分かるほうが、お互いに損が少ないと考えることもできます。
内定辞退も、同じ仕組みです
辞退は、入社前に期待と実際の差が見えてしまった状態とも言えます。
内定から入社までの間に連絡が途切れると、学生は他店の情報だけで比べ続けます。この期間に何も届かないこと自体が、期待を下げる材料になります。
まとめ
辞められたとき、条件を見直す前に、こちらを見てみてください。
- 満足は、期待と実際の差で決まる
- 求人票をよく書くほど、期待は上がる
- 下げるのではなく、具体的に書いて正確にする
- 業務委託は、歩合とインボイスの負担を最初に決めて書面に残す
- 見学では、良いところだけを見せない
採用の目的は、決まることではなく続くことです。入口で正確に伝えるほうが、あとで楽になるのだと思います。
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