スタッフ紹介で美容師を採る。謝礼の決め方と、頼み方、やってはいけないこと

いちばん決まりやすく、いちばん辞めにくい入口は、すでにサロンの中にあります。
スタッフの紹介です。費用はほとんどかからず、入ってからの定着もよい。それなのに、仕組みとして持っているサロンは多くありません。「誰か知り合いいない?」と朝礼で言うだけで終わっています。
謝礼の決め方、頼み方、そしてやってはいけないことをまとめました。
なぜ紹介は決まりやすいのか
理由は3つあります。
① お互いをすでに知っている。 紹介する側は、サロンの雰囲気も、紹介する相手の人柄も知っています。「あの子ならうちに合う」という判断が、面接5回ぶんくらいの情報量を持っています。
② 入る前に、現場の話を聞いている。 求人票では伝わらないこと(営業後の練習、シフトの実際、誰が教えてくれるか)を、入る前に知っています。入ってから「話が違う」が起きにくいのは、このためです。
③ 入ったあとに、知っている人がいる。 最初の3か月でいちばん効くのがこれです。分からないことを聞ける相手が初日からいる。辞めにくさは、ほぼここで決まります。
費用の面でも違います。媒体や紹介会社を使えば、1人あたり15万円から30万円かかることもあります。紹介なら、その何分の一かで済みます。
謝礼をどう決めるか
金額の考え方
「いくらが正解か」はサロンによって違いますが、決め方には考え方があります。
媒体にかけている費用から逆算する。 1人採用するのに媒体で20万円かかっているなら、紹介の謝礼が5万円でも10万円でも、サロンとしては得をしています。「払いすぎかな」と迷ったら、この比較に戻ってください。
紹介した人と、入った人の両方に出す。 片方だけだと、紹介された側が「自分をお金に換えられた」と感じることがあります。両方に出すほうが、気持ちよく始まります。
分けて払う。 入社時に全額ではなく、入社時と3か月後(または6か月後)に分けます。すぐ辞めてしまった場合の歯止めになりますし、紹介した側も「ちゃんと続いているか」を気にかけます。
決めたら、紙にして全員に配る
口約束にしないでください。「いくら」「いつ」「どういう条件で」を書いて、スタッフ全員が見られる場所に置きます。
- 誰を紹介したら対象になるか(職種、雇用形態)
- いくら払うか。紹介した人と、入った人それぞれ
- いつ払うか(入社時/3か月後、など)
- 対象にならない場合(下の「やってはいけないこと」を参照)
曖昧なまま運用すると、揉めます。 「紹介したのにもらえなかった」は、スタッフとの関係を確実に傷つけます。
給与の扱いを確かめる
紹介の謝礼は、給与として扱うのか、別の形にするのかで税や社会保険の扱いが変わります。金額や支払い方によっても違います。
制度を作る前に、顧問の税理士や社会保険労務士にご確認ください。ここは「よそがこうしているから」で決めないほうが安全です。
頼み方
制度を作っても、頼まなければ紹介は出ません。
全員にまとめて言わない
朝礼で「誰か知り合いいない?」と言っても、自分のこととして受け取る人はいません。 「誰か」は誰でもないからです。
ひとりずつ、具体的に聞いてください。
「◯◯さんの専門学校の同期で、いま転職を考えていそうな人っていないかな?」
名前を呼んで、範囲を狭めて聞く。これだけで返ってくる答えがまったく違います。
何を探しているかを、はっきり伝える
「いい人がいたら」では、スタッフも誰を思い浮かべればよいか分かりません。
- どの職種か(スタイリスト/アシスタント/アイリスト/ネイリスト)
- どの店舗か
- いつから来てほしいか
- どんな人と働きたいか
ここまで言えば、スタッフの頭の中で誰かの顔が浮かびます。 浮かばなければ、浮かばないと言ってもらえます。それも情報です。
聞く時期を選ぶ
美容師が転職に動くのは、繁忙期が明けたあとです。1月・2月、5月・6月、9月・10月。
紹介を頼むのも、その少し前がいちばん効きます。詳しくは美容師の中途採用はいつ動くかにまとめました。
断りやすくしておく
いちばん大事かもしれません。
紹介を頼まれたスタッフには、見えない負担がかかります。「もし合わなかったらどうしよう」「紹介した手前、辞めると言いにくくなるかも」。この不安があると、思い当たる人がいても言い出せません。
「合わなければ、無理に誘わなくていいからね」
この一言を、必ず添えてください。紹介する側の責任を軽くしておくほうが、結果として紹介は出ます。
紹介された方への接し方
選考を省かない
「◯◯さんの紹介だから」と面接を飛ばすと、あとで困ります。条件の説明も、技術の確認も、通常どおり行ってください。
ただし、順番は変えてよいと思います。いきなり面接ではなく、まず店を見ていただく。紹介された方は、すでにサロンの話を聞いています。見学から入るほうが自然です。
断るときこそ丁寧に
紹介された方をお断りすることもあります。このとき雑に扱うと、紹介したスタッフとの関係に傷がつきます。 サロンの中に影響が残るのが、紹介の難しいところです。
- 本人には、こちらから直接伝える
- 紹介したスタッフにも、断ったことを先に伝える
- 理由は、本人に責任のない形で伝える(「いまの募集職種と合わなかった」など)
入ったあと、紹介した人に任せすぎない
「紹介した人が面倒を見る」になりがちですが、これは避けてください。紹介したスタッフの負担が増えますし、人間関係が入り組みます。
教える人は、通常どおり決めてください。 紹介した人は、相談相手として自然にいてくれるだけで十分です。
やってはいけないこと
媒体や紹介会社を通った方を、紹介扱いにする
ここは必ず押さえてください。
一度その入口を通った方は、そのあとサロンが直接やり取りをしても、採用が決まれば費用の対象になることがほとんどです。
「媒体から応募があったけれど見送った方を、半年後にスタッフの紹介ということにして採用する」。これは費用の支払いを避けたことになり、契約違反にあたる可能性があります。期間や条件は契約によって違うので、必ず契約書をご確認ください。
防ぐには、どこから来た方かを記録しておくことです。記録がなければ、意図せず同じことが起きます。詳しくは美容師の採用、入口を増やしたあとに起きることにまとめました。
在職中の方を、強く誘わせる
紹介で来る方の多くは、他のサロンで働いています。スタッフに「声をかけてきて」と強く頼むと、引き抜きに近い形になりかねません。
本人が動く気になっているかどうかを先に確かめてもらう。これだけで、だいぶ違います。
紹介した人数で、スタッフを評価する
評価や査定に結び付けないでください。紹介が義務になった瞬間に、無理な声かけが始まります。
謝礼は「ありがとう」の形であって、成績ではありません。
紹介も、記録に残す
紹介で入った方も、記録のうえでは媒体から来た方と同じように扱ってください。
- 誰の紹介か
- いつつながったか
- いまどの段階か
- 謝礼をいつ払ったか
これがないと、紹介が年に何件あって、何人入ったかが分かりません。 数字が出ないと、制度を続けるかどうかの判断もできません。
紹介は数が少ないぶん、1件ごとの重みが大きくなります。美容室の採用管理表の作り方の考え方で、入口のひとつとして並べてみてください。
紹介の受け皿をつくる
私たちが提供している「QJ Manager」は、サロンのLINE公式アカウントにつないで使う採用管理ツールです。紹介のまわりでは、次のように使えます。
- スタッフ紹介専用のQRコードを作れる。紹介された方がそれを読み取れば、紹介経由として自動で記録される
- 媒体・SNS・店頭と入口を分けて記録できるので、あとから「この方はどこから来たか」を確かめられる
- 見学や面談の予約は、登録済みの枠から本人に選んでいただける
- 入口ごとに応募数・面接数・入社数を並べられるので、紹介が効いているかを数字で見られる
スタッフに渡すのは、QRコードが1枚あれば足ります。「これを送っておいて」で済むほうが、紹介は出やすくなります。
中途採用でのご利用については、中途採用向けのご案内で詳しくご説明しています。
まとめ
- 紹介は、決まりやすく辞めにくい。入る前に現場を知っていて、入ったあとに知っている人がいるから
- 謝礼は媒体費用から逆算する。紹介した人と入った人の両方に、分けて払う
- 決めたら紙にして全員に配る。曖昧なまま運用すると揉める
- 税や社会保険の扱いは、作る前に顧問に確かめる
- 「誰か知り合いいない?」では出ない。ひとりずつ、職種と店舗を具体的に言って聞く
- 「無理に誘わなくていいからね」を必ず添える。 断りやすくするほど紹介は出る
- 選考は省かない。断るときこそ丁寧に
- 媒体や紹介会社を通った方を、紹介扱いにしない。 契約違反になりうる
- 紹介した人数で評価しない。謝礼は成績ではなく、ありがとうの形
今日いるスタッフに、専門学校の同期は何人いるでしょうか。
採用にいちばん近い名簿は、求人サイトではなく、スタッフのスマートフォンの中にあるのかもしれません。
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