美容室の求人票の書き方。応募が来る書き方と、書いてはいけないこと

求人票は、応募しようと思っている人が読むものではありません。応募しない理由を探している人が読むものです。
美容師が求人を見るとき、画面には何十件も並んでいます。そのすべてを丁寧に読む人はいません。条件を上から眺めて、合わないものを落としていきます。残ったものだけが、もう一度読まれます。
つまり求人票の仕事は、最初の数十秒で落とされないことです。良さを伝えるのは、そのあとです。
必ず書かなければいけないこと、書いてはいけないこと、そして美容室でいちばん読まれるところをまとめました。
法律で、書かなければいけないことがある
ここは好みの問題ではありません。職業安定法で、求人のときに明示しなければならない項目が決まっています。ハローワークだけの話ではなく、求人媒体でも、自店のホームページやSNSで募集するときも対象です。
もうひとつ、根っこにある決まりがあります。2022年10月の改正で、求人情報の的確表示が義務になりました。
- 虚偽の表示、誤解を生じさせる表示をしてはならない
- 求人情報を、正確で最新の内容に保つ措置を取らなければならない
とくに賃金、雇用形態、勤務時間のように、応募する人が判断のよりどころにするところでは、曖昧な書き方や不明瞭な書き方をしないよう求められています。
このあと出てくる「こう書けない」という話は、ほとんどがここから来ています。嘘を書かないことだけでなく、読み違えさせないことまでが義務だと考えてください。
| 明示する項目 | 美容室での書き方 |
|---|---|
| 業務の内容 | カット、カラー、パーマ、まつ毛エクステ、受付、店販 |
| 契約期間 | 期間の定めなし/あり(ありなら期間も) |
| 試用期間 | 有無、長さ、その間の条件 |
| 就業場所 | 店舗名と住所 |
| 就業時間、休憩、休日、時間外労働 | シフト制ならその旨と、1か月あたりの休日数 |
| 賃金 | 下で詳しくお伝えします |
| 加入する保険 | 社会保険、雇用保険、労災 |
| 募集者の氏名または名称 | サロン名、運営会社名 |
| 派遣労働者として雇用する場合はその旨 | 美容室では該当しないことがほとんどです |
2024年4月から、3つ増えました
見落とされやすいのがここです。2024年4月の改正で、次の3つが加わりました。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業場所の変更の範囲
- 有期の契約を更新する場合の基準
「変更の範囲」とは、入ったときだけでなく、この先の異動まで含めた範囲のことです。美容室では、店舗が複数あるかどうかで書き方が変わります。
就業場所:◯◯店(東京都△△区…) 変更の範囲:当社が運営する全店舗
1店舗だけなら「変更なし」と書けば済みます。複数店舗があるなら、異動がありうることを先に書いておく。入ってから「異動があるとは聞いていない」と言われるのは、ここを書いていないときです。
決まりは変わることがあります。最新の内容は厚生労働省のページか、顧問の社会保険労務士さんにご確認ください。
書いてはいけないこと
年齢で区切らない
「25歳までの方」「若手歓迎」。こうした書き方は、原則としてできません。労働施策総合推進法で、募集・採用時の年齢制限は禁止されています。例外は法令が定める事由に限られ、「若い人がほしい」は理由になりません。
「年齢不問」と書けばよい、という話でもありません。 書面で不問としておきながら、実際には年齢で落としていれば同じことです。
ただし、年齢にまったく触れられないわけではありません。分かれ目は、呼びかけているか、事実を述べているかです。
| ✕ 呼びかけ | ⭕️ 事実や状況 |
|---|---|
| 30歳以上も歓迎 | 30代スタイリストも活躍中 |
| 40〜50歳代の方も応募可 | 40代スタッフも多く在籍 |
左は「その年齢層に来てほしい」と言っています。右は「そういう人がいます」と言っているだけです。伝わる内容は近いのに、扱いが違います。
なお、長く勤めていただくことを前提に経験を問わず募集する場合など、法令が定める例外に当たれば上限年齢を示せることがあります。条件が細かいので、使うときは媒体の担当者か社会保険労務士さんにご確認ください。
性別で区切らない
「女性スタイリスト募集」も、原則としてできません。男女雇用機会均等法が、募集・採用で性別を理由に扱いを変えることを禁じています。
美容室では「女性のお客様が多いので」という事情が出てきますが、それは募集条件ではなく、サロンの特徴として書くところです。
事実と違うことを書かない
- 休日数を実際より多く書く
- 残業が常にあるのに「残業なし」と書く
- 平均の給与を、上位の人の数字で書く
入ってから分かることは、必ず分かります。採用した美容師が3か月で辞める原因の多くが、ここから始まります。採用できても、定着しなければ振り出しです。
給与の書き方
美容室の求人票で、いちばん誤解が起きるところです。
書けるのは、必ず支払われる額だけ
求人に書く給与は、その条件で最低限保障される金額です。月によって変わるものを混ぜることはできません。混ぜると、読んだ人に「必ずもらえる額」が分からなくなるからです。
| ✕ 書けない | ⭕️ こう書く |
|---|---|
| 月給25万円(歩合含む) | 月給25万円+歩合 |
| 月給25万円(店販手当含む) | 月給25万円+店販手当 |
| 月給25万円(各種手当含む) | 月給25万円(職務手当2万円含む) |
| 月給25万円(交通費含む) | 月給25万円(交通費別途支給) |
| 月収25万円/初任給25万円 | 月給22万円+歩合(月収例25万円) |
| 給与 手取り20万円 | 月給25万円(総支給額) |
| 給与 およそ20万円 | 月給25万円 |
歩合や変動する手当を書いてはいけない、という話ではありません。月給と分けて書けば問題ありません。
一律で付く手当を月給に含めるのは構いませんが、手当の名前と金額を書いてください。「一律手当含む」では何が入っているか分かりません。「一律住宅手当1万円含む」なら分かります。
「月収」「初任給」は、月給に変動分も含めた総収入を指す言葉です。最低限もらえる額を表していないので、これだけを書くことはできません。月給で最下限を示したうえで、例として添えてください。
固定残業代を使うなら、3つとも書く
固定残業代(みなし残業代)を入れる場合、次の3つをすべて明示することが求められています。
- 固定残業代の時間数と金額
- それを除いた基本給の額
- その時間を超えた分は、追加で支払うこと
✕ 月給25万円(固定残業代含む)
⭕️ 月給25万円 基本給 21万2,000円 固定残業代 3万8,000円(20時間分) 20時間を超える残業代は追加で支給
3つめを書き忘れると、「その時間を超えても払わない」という意味に読まれます。実際にはそれはできません。
試用期間は、長さと金額をセットで
| ✕ | ⭕️ |
|---|---|
| 月給20万円(ただし試用期間中は19万円) | 月給20万円(ただし試用期間3か月は月給19万円) |
期間の長さが書かれていないものは認められません。条件が変わらない場合も、試用期間があることとその長さは書きます。
歩合があるなら、計算方法まで書く
美容室の求人で「歩合あり」とだけ書かれているのをよく見ます。これでは何も伝わりません。
- 何に対する歩合か(技術売上か、店販か、指名か)
- 何パーセントか
- いつから対象になるか(デビュー後か、入社初月からか)
- 指名料はどう扱うか
ここを書いているサロンは多くありません。だからこそ、書くと目立ちます。
美容師が、本当に読んでいるところ
条件の確認が終わったあと、残った求人票で読まれるのはここです。
1. 休みの取り方
休日数だけでなく、取り方を書いてください。
- 月の休みが何日か
- 連休は取れるか
- 希望は出せるか
- 土日に休めることはあるか
美容師が転職を考える理由の上位に、休みの取りづらさがあります。転職が動くのは繁忙期が明けたあとですが、理由そのものは年中くすぶっています。
2. 練習と講習の時間
これは必ず書いてください。美容室でいちばん揉めるところです。
- 営業後の練習があるか、ないか
- あるなら、週に何回、何時間か
- その時間は勤務時間に入るのか
- 講習費は誰が負担するのか
書きにくいと感じるかもしれません。ただ、書かずに採用して入社後に説明するほうが、はるかに損をします。
3. デビューまでの道のり
アシスタントを採る場合、ここがいちばん比べられます。
- 平均で何年でデビューしているか
- 何を身につければ進めるのか
- 教えるのは誰か
「個人差があります」で終わらせないでください。実際にいまいるスタッフが何年でデビューしたかを書くほうが、ずっと伝わります。
4. 誰と働くことになるか
スタッフの人数、年齢の幅、男女の比率、1日のお客様の人数、客層。数字で書けるところは数字で書きます。
書く順番
上から順に落とされていくので、落とされない情報を先に置くのが基本です。
- 職種と雇用形態(スタイリスト/アシスタント、正社員/パート)
- 勤務地
- 給与(仕組みまで)
- 休日
- 勤務時間
- 練習・講習の扱い
- サロンの特徴、働く人のこと
- 応募の方法
多くの求人票は、7番を先に書いています。気持ちは分かりますが、読まれるのは条件が合った人だけです。
媒体ごとに、どこまで変えるか
求人媒体はそれぞれ入力欄の形が違うので、まったく同じ文面は使えません。ただ、中身をばらばらにしないことが大事です。
- 給与の条件、休日数、練習の扱いは、どの媒体でも同じにする
- サロンの紹介文は、媒体の読者に合わせて変えてよい
条件がずれていると、見比べた応募者に不信感を持たれます。見比べる人は、思っているより多くいます。
媒体ごとの向き不向きは、美容師の採用、入口を増やしたあとに起きることにまとめています。
書いた求人票を、無駄にしない
私たちが提供している「QJ Manager」は、サロンのLINE公式アカウントにつないで使う採用管理ツールです。求人票そのものを作る道具ではありませんが、書いた求人票を無駄にしないために使えます。
- 媒体・SNS・店頭それぞれに別のQRコードを置けるので、どの求人票から来たかが分かる
- 応募を受け取ると自動で返事が届く。返事の遅さで取りこぼすことがなくなります
- 条件についてよく来る質問には、自動で答えられる
- 面談や見学の予約は、登録済みの枠から本人に選んでいただける
求人票を直したあと、応募の数がどう変わったかを入口ごとに比べられます。直した効果が分からないままだと、次に何を直せばよいかも決まりません。
中途採用でのご利用については、中途採用向けのご案内でご説明しています。
まとめ
- 求人票は、落とされないために書く。良さを伝えるのはそのあと
- 職業安定法で明示する項目が決まっている。ハローワークだけでなく、媒体も自店のSNSも対象
- 2024年4月から「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」が加わった。複数店舗なら異動の可能性を先に書く
- 年齢や性別で区切れない。「年齢不問」と書いて実際は落とす、も同じこと
- 年齢は「呼びかけ」が不可で「事実や状況」は可。✕30歳以上も歓迎/⭕️30代スタイリストも活躍中
- 2022年10月から求人情報の「的確表示」が義務。嘘を書かないだけでなく、読み違えさせないことまで求められる
- 給与に書けるのは必ず支払われる額だけ。「月給25万円(歩合含む)」は書けず、「月給25万円+歩合」と分ける
- 月収・初任給・手取り・およその額だけの表記は使えない。最下限が分からないため
- 固定残業代は3つとも書く。歩合は計算方法まで
- 試用期間は長さと金額をセットで。条件が変わらない場合も期間は書く
- 練習と講習の扱いは必ず書く。美容室でいちばん揉めるところ
- デビューまでの年数は「個人差があります」で終わらせず、いまいるスタッフの実際を書く
- 条件を先、サロンの紹介を後。媒体が違っても条件はそろえる
いまお使いの求人票を、上から順に読んでみてください。
はじめの5行で落とされているなら、そのあとに何を書いても読まれていないのです。
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